[著者情報]
この記事を書いた人:Kensuke Goto
中小企業専門ブランドストラテジスト / 元・地方アパレルブランド経営者
地方で立ち上げた無名のアパレルブランドを、独自の哲学で全国区の人気ブランドに育て上げた経験を持つ。現在はその経験を基に、年間50社以上の地方企業のコンサルティングを行う。「私もあなたと同じ地方の経営者でした。だからこそ、綺麗事ではない、現場で使えるリアルな戦略だけを伝えます。」
「地方の小さな会社が、SNSで有名企業に勝てるわけがない…」
日々の業務に追われながら、スマートフォンの画面越しに都会のキラキラしたインフルエンサーや大企業のアカウントを見て、そうため息をついていませんか?
確かに、資本力や知名度で正面から戦っても勝ち目はありません。しかし、戦い方を変えれば、地方の小さな会社こそが「唯一無二」のブランドになれる可能性を秘めています。
そのための最強の教科書となるのが、今SNSで話題の経営者・森下直哉(もりした なおや)氏の哲学です。
この記事では、森下氏の表面的なSNSテクニック(投稿頻度やハッシュタグなど)を真似するのではなく、彼の根底にある「自分を捨てて、勝てる場所で戦う」という思考法を、地方ビジネスに落とし込むための具体的なロードマップとして解説します。
読み終える頃には、あなたの会社が明日から取るべき「生存戦略」が明確に見えているはずです。
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なぜ「地方の会社」はSNSで埋もれてしまうのか?
まず、多くの地方企業が陥っている「SNSの罠」についてお話しさせてください。
私のコンサルティング経験上、成果が出ない企業の多くは、無意識のうちに「強者の真似」をしてしまっています。綺麗な写真をアップし、当たり障りのない挨拶をし、流行りの曲で動画を作る。しかし、これらは全て「すでに認知度があるブランド」だからこそ効果がある手法です。
「強者がやるSNS」がなぜ強いのかを理解したい方は、投稿設計でファンを引きつける具体例として池田美優(みちょぱ)のSNS運用術とセルフブランディングも参考になります(真似るのは“形”ではなく“設計思想”です)。
「その他大勢」から抜け出せない構造的理由
地方企業が都会の真似をすると、必ず「資本力の壁」と「価格競争」にぶつかります。同じ土俵で戦う限り、より安く、より大量に提供できる大手が勝つのは自明の理だからです。
では、どうすれば良いのでしょうか。答えはシンプルです。「戦う土俵をずらす」ことです。
ここで登場するのが、森下直哉氏の提唱するブランディング哲学です。彼は「自分らしさ」という曖昧なものに固執せず、徹底的に客観的な視点で「勝てるキャラクター」を作り上げることで、独自のポジションを確立しました。
森下直哉流「自分を捨てる」ブランディングの極意
森下氏の戦略の核心は、「セルフプロデュースとは、自分を捨てることである」という逆説的な考え方にあります。
多くの人は「ありのままの自分(自社)を見てほしい」と願いますが、残酷なことに、市場は無名のあなたの「ありのまま」には興味がありません。だからこそ、主観的な「自分」を一旦捨て、顧客が求めている「キャラクター(ブランド)」を演じ切る覚悟が必要なのです。
「戦闘力」×「ギャップ」=唯一無二のブランド
森下氏の思考を分解すると、以下の2つの要素が重要であることがわかります。
- 戦闘力(Combat Power):
業界の常識とは異なる、あなただけが提供できる独自の価値。 - ギャップ(Gap):
世間の「地方企業への先入観」を良い意味で裏切るズレ。
森下氏自身、「タトゥーが入っている(ワイルドな見た目)」のに「腰が低く礼儀正しい(誠実な対応)」という強烈なギャップを武器にしています。このギャップこそが、人の記憶にフックをかけ、ファンを生み出す源泉なのです。
また、ブランドが“記憶される”仕組みはSNS単体ではなく、複数メディアでの接触が重なって強化されます。考え方の整理としてはクロスメディア効果(複数媒体の接触で印象が強まる仕組み)の解説も役立ちます。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「自分らしさ」を探す旅は今日で終わりにしましょう。
なぜなら、ビジネスにおける「らしさ」とは、内面から湧き出るものではなく、顧客との関係性の中で「意図的に構築するもの」だからです。私のクライアントでも、成功した経営者は皆、自身のこだわりよりも「顧客からどう見られたいか」を徹底的にデザインしています。
【実践ワーク】自社の「武器」を見つける3ステップ
哲学を理解したところで、実際にあなたの会社に当てはめてみましょう。以下の3ステップで、明日から使える「武器」を発掘します。
Step 1: 「戦闘力」の再定義
「品質が良い」「美味しい」は当たり前です。それ以外の部分に、あなたの会社の本当の戦闘力が眠っています。
- 例: 大手にはできない「社長直通のスピード対応」
- 例: 業界の慣習を無視した「奇抜なパッケージデザイン」
Step 2: 世間の「偏見」を利用したギャップ設計
地方企業に対するネガティブなイメージ(偏見)を逆手に取ります。
- 偏見: 「地方の会社はセンスが古そう」
➡ ギャップ: 東京のどの会社よりも尖った、最先端のデザインを発信する。 - 偏見: 「小さな会社は頼りない」
➡ ギャップ: 大手以上にマニアックな専門知識を持ち、オタク的に深掘り解説する。
Step 3: 「弱み」を「物語」に変える
コンプレックスこそが最大の武器になります。森下氏のタトゥーのように、一見ネガティブな要素をポジティブな文脈で語り直すのです。
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| あなたの弱み(コンプレックス) | 物語への変換(リフレーミング) | 生まれる価値 |
|---|---|---|
| 創業したばかりで実績がない | 「実績がないからこそ、一件の仕事に命を懸けます」 | 圧倒的な熱意と誠実さ |
| 立地が悪く、人が来ない | 「わざわざ来る人しかいない、隠れ家的な聖地」 | 特別感とコミュニティ |
| 口下手で営業が苦手 | 「上手いことは言えませんが、嘘はつきません」 | 信頼感と人間味 |
よくある質問(FAQ)
森下氏の戦略を実践しようとする際、よくある疑問にお答えします。
Q1. 森下さんのように、見た目を派手に(タトゥーなどを)すべきですか?
A. いいえ、形だけを真似する必要はありません。
重要なのはタトゥーそのものではなく、「見た目と中身のギャップを作る」という思考法です。スーツを着た堅物そうな社長が、実はめちゃくちゃファンキーな趣味を持っている、といったギャップでも十分な武器になります。
Q2. どのSNSを使えばいいですか?(Instagram?TikTok?)
A. ツール選びの前に「誰が(Who)」を固めてください。
森下氏の哲学では、プラットフォーム(Where)や投稿内容(What)よりも、発信者であるあなた自身(Who)のキャラクター設定が最優先です。「誰が語るか」が決まれば、相性の良いSNSは自然と決まります。
Q3. 「自分を捨てる」とストレスが溜まりませんか?
A. 最初は違和感があるかもしれませんが、結果が出ると楽しくなります。
これは「嘘をつく」ことではなく、ビジネスのための「プロとしての仮面」を被ることです。その仮面(ブランド)が評価され、会社が成長すれば、その役割を演じることが喜びや誇りに変わっていきます。
また、SNSは“見せ方”次第で印象が大きく変わり、誤解も生みます。写真の見え方・加工・ライティングが与える印象差についてはInstagram投稿が与える印象の変化とセルフブランディングの注意点が参考になります。
まとめ:地方企業こそ「演出」して輝け
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今回は、森下直哉氏のSNS戦略の本質である「ブランディング思考」について解説しました。
- 「自分らしさ」に逃げず、顧客視点で徹底的に自分を演出する。
- 「戦闘力」と「ギャップ」を掛け合わせ、競合のいない場所で戦う。
- 「弱み」を隠さず、共感を呼ぶ「物語」として武器に変える。
「地方だから」「小さいから」という理由は、諦める理由にはなりません。むしろ、小回りが利き、個性を出しやすい地方企業こそ、この戦略を使いこなせるポテンシャルを持っています。
まずは、記事内で紹介したワークシートの質問を一つでも埋めてみてください。そのペン先から、あなたの会社の新しい伝説が始まります。
【参考文献・出典】
- Waccel:「自分を捨てる」ことで、自分だけの市場を創る。連続起業家・森下直哉のセルフプロデュース論
- ウォーカープラス:「何者かになりたいなら、戦闘力を高めろ」“和製ジョニー・デップ”と話題の経営者・森下直哉の仕事術
- Woman type:森下直哉「“自分らしさ”なんて、クソくらえ」タトゥーOKの会社を作った異端経営者の仕事哲学



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