[著者情報]
冴木 エリ(さえき えり)
エンタメコラムニスト / 90年代ドラマ研究家。
90年代から00年代の日本ドラマ黄金期をリアルタイムで駆け抜け、これまでに数千点の雑誌資料や番組記録を分析。現在は大手エンタメメディアで俳優のブランディングに関する連載を担当。「同じ時代を歩んできたファン」の視点と、専門家としての鋭い分析を融合させた執筆スタイルに定評がある。
「あの頃、月曜の夜は街から女性が消える」と言われた時代がありました。1996年の大ヒットドラマ『ロングバケーション』。画面に映る竹野内豊さんの、少し不器用で繊細な色気に、私たち全員が恋をしていましたよね。
50代を迎えた現在の竹野内豊さんも、品格ある渋みが加わり本当に素敵ですが、ふとした瞬間に「若い頃のあの瑞々しい姿をもう一度見たい」と思うことはありませんか?
この記事では、1989年のモデルデビューから、日本中の女性を虜にしたドラマ黄金期、そして現在の「渋い魅力」へと繋がるターニングポイントとなった「髭のワイルド時代」まで、竹野内豊さんの若い頃の軌跡を完全網羅しました。単なる懐古ではなく、彼がどのようにして「唯一無二の俳優」へと進化を遂げたのか、その美学の正体を解き明かします。
私たちが恋した「あの頃」の竹野内豊|90年代ドラマ黄金期の熱狂を振り返る

出典元:Real Sound
90年代、私たちの生活の中心にはいつも「テレビドラマ」がありました。特にフジテレビの「月9」枠は、流行の最先端であり、私たちの憧れそのものでした。その中心にいたのが、竹野内豊さんです。
『ロングバケーション』で見せた「静かな色気」
1996年の『ロングバケーション』で竹野内豊さんが演じた葉山真二は、ワイルドでありながらどこか放っておけない繊細さを持ち合わせていました。ピアノを弾く指先や、ふとした瞬間に見せる寂しげな表情。当時の私たちは、木村拓哉さん演じる瀬名とはまた違う、竹野内豊さんの「静かな色気」に夢中になりました。
この作品で彼が見せた、言葉少なに相手を見つめる視線や、憂いを帯びた佇まいは、多くの視聴者の心を鷲掴みにしました。ただそこにいるだけで絵になる、その圧倒的な存在感は、モデル出身ならではの強みだったと言えるでしょう。
『ロングバケーション』という作品そのものや、共演した山口智子さんの若い頃から現在までの歩みについて深く知りたい方は、山口智子の若い頃と現在の軌跡を徹底解説した記事もあわせて読むと、当時の空気感をより立体的にイメージできます。
『ビーチボーイズ』で確立した反町隆史との黄金コンビ

出典元:Real Sound
そして翌1997年、反町隆史さんとダブル主演を務めた『ビーチボーイズ』。竹野内豊さんが演じたエリートサラリーマン・鈴木海都が、スーツを脱ぎ捨てて海辺で自分を見つめ直す姿は、社会現象を巻き起こしました。
反町隆史さんの太陽のような「動」の魅力に対し、竹野内豊さんの月のような「静」の魅力。この二人の対比こそが、90年代の熱狂を象徴するアイコンだったのです。真夏の太陽の下、小麦色に焼けた肌と白いTシャツ、そして時折見せるアンニュイな表情は、当時の「理想の男性像」そのものでした。
『ビーチボーイズ』のもう一人の主役である反町隆史さんの若い頃や、『GTO』など90年代の代表作についてより詳しく知りたい方は、反町隆史の若い頃と『ビーチボーイズ』『GTO』の伝説を振り返る記事も参考になるはずです。二人の歩んできたキャリアをセットで追うことで、当時のドラマシーンがいっそう鮮明に見えてきます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 竹野内豊さんの若い頃を振り返る際は、単に「顔が整っている」という点だけでなく、その「瞳の演技」に注目してください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちですが、竹野内豊さんはデビュー当時から、セリフがないシーンでも視線一つでキャラクターの孤独や葛藤を表現できる稀有な俳優だったからです。この繊細な表現力こそが、単なるアイドル的人気で終わらず、現在の実力派俳優としての地位を築いた土台となっています。
伝説の始まりは『MEN’S NON-NO』|モデル時代の秘蔵エピソードとデビュー秘話
竹野内豊さんのキャリアの原点は、1989年に遡ります。実は、竹野内豊さんが芸能界入りしたきっかけは、お母様とお姉様が雑誌『MEN’S NON-NO』の読者モデルオーディションに履歴書を送ったことでした。
モデルオーディション合格とトップモデルへの道
当時の『MEN’S NON-NO』は、阿部寛さんや風間トオルさんといった「モデル出身俳優」を次々と輩出していた伝説的な雑誌です。竹野内豊さんは、その端正なルックスと圧倒的なスタイルで、瞬く間にトップモデルとしての地位を確立しました。
誌面を飾る彼の姿は、洗練された都会的な青年の象徴であり、多くの男性読者の憧れの的でもありました。モデル時代に培われた「見られること」への意識と、洋服を美しく見せるための立ち振る舞いは、後の俳優業における彼の所作の美しさに直結しています。
俳優への転身と『ボクの就職』でのデビュー
しかし、竹野内豊さん自身は最初から俳優を志していたわけではありませんでした。モデルとしての表現に限界を感じ、自分自身の言葉で何かを伝えたいという欲求が芽生えたことが、1994年のドラマ『ボクの就職』での俳優デビューへと繋がったのです。
この転身は、彼にとって大きな挑戦でした。モデル時代の「静止画」の世界から、「動画」と「言葉」の世界へ。初期の作品では、演技に対する戸惑いや初々しさも垣間見えましたが、その等身大の姿が、かえって視聴者の親近感を呼びました。

(画像:竹野内豊の1989年モデルデビューから1994年俳優デビューまでの年表図解)
爽やかからワイルドへ|『髭』が変えた俳優人生と、今に続く「渋み」のルーツ
竹野内豊さんのキャリアにおいて、最も重要なビジュアルの変化は「髭」の有無です。20代前半の竹野内豊さんは、髭のない、透明感溢れる「正統派美青年」として認知されていました。しかし、20代後半に差し掛かる頃、彼は大きなイメージチェンジを図ります。
『WITH LOVE』『氷の世界』での大胆なイメージチェンジ
その象徴的な作品が、1998年の『WITH LOVE』や1999年の『氷の世界』です。竹野内豊さんは、それまでの爽やかなイメージを覆すように髭を蓄え、よりミステリアスで「影のある大人の男」へと変貌を遂げました。
『WITH LOVE』では、インターネットを通じて顔の見えない相手と心を通わせる作曲家を演じ、その繊細な内面とワイルドな外見のギャップが話題となりました。また、『氷の世界』では、保険金殺人疑惑の渦中にある女性に惹かれていく保険調査員を演じ、その危険な香りのする演技が高い評価を受けました。
「脱・アイドル俳優」への強い意志
この「髭」という選択は、単なるファッションではありませんでした。アイドル的な人気に甘んじることなく、一人の「表現者」として深みを増そうとする、竹野内豊さんの強い意志の表れだったのです。
この時期に確立されたワイルドな色気こそが、現在の50代で見せる「品格ある渋み」の直接的なルーツとなっています。もし、彼がこの時リスクを恐れてイメージチェンジをしていなかったら、現在の「唯一無二の俳優・竹野内豊」は存在していなかったかもしれません。
20代の竹野内豊:ビジュアルとキャリアの変遷
以下の表は、竹野内豊さんの20代におけるビジュアルとキャリアの変遷をまとめたものです。
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| 項目 | 20代前半(1994-1997) | 20代後半(1998-2001) |
|---|---|---|
| 主なビジュアル | 髭なし・短髪〜ミディアム | 髭あり・ワイルドなスタイリング |
| 代表作 | 『星の金貨』 『ロングバケーション』 『ビーチボーイズ』 |
『WITH LOVE』 『氷の世界』 『真夏のメリークリスマス』 |
| 役柄の傾向 | 繊細な青年、爽やかなエリート、弟キャラ | 孤独を抱える男、ミステリアスな主人公、専門職 |
| 世間の印象 | 「守ってあげたい」正統派美青年 | 「抱かれたい」大人の色気を持つ男 |
よくある質問:竹野内豊さんの若い頃に関するQ&A
ここでは、竹野内豊さんの若い頃について、ファンの間でよく話題になる疑問にお答えします。
- Q1: 反町隆史さんとは、若い頃から本当に仲が良かったのですか?
- A: はい、非常に良好な関係です。
『ビーチボーイズ』での共演以来、お二人は良きライバルであり、親友でもあります。真夏の過酷なロケを通じて育まれた絆は深く、竹野内豊さんは後に「反町くんがいたから、あの過酷なロケも乗り越えられた」と語っています。現在でもお互いの節目には連絡を取り合うなど、30年近い友情が続いており、ファンにとっては「最強のバディ」として認識されています。
- Q2: 若い頃の竹野内豊さんの作品を今から見るなら、どれがおすすめですか?
- A: 彼の魅力の変遷を楽しむなら、以下の3作がおすすめです。
- 『ロングバケーション』(1996): 彼の代名詞とも言える「静」の魅力、繊細な色気を堪能したい方へ。
- 『ビーチボーイズ』(1997): 圧倒的なスター性と、反町隆史さんとの最高の化学反応を感じたい方へ。
- 『WITH LOVE』(1998): 大人の色気の始まりと、繊細な内面表現を確認したい方へ。
特に『WITH LOVE』での、ネットを通じて心を通わせる繊細な演技は、インターネットが普及し始めた当時の時代背景とも相まって、今見ても全く色褪せていません。
- Q3: モデル時代の竹野内豊さんの写真はどこで見られますか?
- A: 残念ながら、公式にまとめられた写真集などは現在販売されていません。
当時の雑誌『MEN’S NON-NO』のバックナンバーは、古書店やオークションサイトで高値で取引されるレアアイテムとなっています。時折、テレビ番組の企画などで当時の写真が紹介されることがあるので、出演情報をチェックするのが最も確実な方法でしょう。彼のモデル時代の姿は、まさに「伝説」となっています。
まとめ
竹野内豊さんの若い頃を振り返ると、そこには単なる「美男子」の記録ではなく、一人の俳優が自らの美学を信じて進化し続ける、情熱的な軌跡がありました。
モデル時代の完成された美しさ、90年代ドラマで見せた瑞々しい感性、そして「髭」と共に手に入れた大人の深み。そのすべてのプロセスが、現在の私たちが愛してやまない「俳優・竹野内豊」を形作っています。
あの頃のトキメキをもう一度体験するために、今夜は過去の名作を配信サービスでチェックしてみてはいかがでしょうか。画面の中に、私たちが恋したあの頃の彼が、変わらない輝きを持って待っているはずです。そして、現在の彼の出演作と見比べることで、その進化の深さをより実感できることでしょう。
[参考文献リスト]



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